+I want to meet you+






「なあヒルデ、もうそろそろいってもいいか?」
「ん〜もうちょっと待って。」
「けどさー。」
「アッ!」
「だ、大丈夫か?」
「平気…。もういきなり動かないでよ!」
「ごめんごめん。」





積まれていたダンボール箱が机に勢いよく倒れた。
どうやらオレが席を立ったときに机を揺らしてしまったらしい。
隣のヒルデの机にまで倒れていって、危うく彼女の手が下敷きになるところだった。
ダンボール箱を元あった場所に積み直して、今度は落ちないように机の奥に押しやった。





「なんでこんなとこに積んどくんだよ?危ないだろ?」
「だって今荷造りの途中なの。もうちょっとで終わりだから待ってて。」
「下に置いとけばいいんじゃないのか?」
「……よしっ、終わったわ!取り敢えず今日の仕事はここまでね!」
「そっか、じゃ先に帰ってもいいか?」
「ええ、お疲れ様デュオ。」
「お疲れさん。じゃあまた後でな!」










やっと今日の仕事が終わった。
建物から出てゆっくり歩き出す。行き先はこの先にある小さな公園。
最近仕事を終えてからここに来てぼーっとするのが日課になっている。
オレは今日も2二つ並んでいる左側のベンチに腰掛ける。
そこから人工の夕日を見るのがいつしか当たり前になっていた。





ヒルデのとこに来て早や2週間。
オレはジャンク屋を経営してるヒルデの仕事を手伝っている。
といっても1ヶ月だけの短期バイトだけど。
普段は地球でヒイロと一緒に暮らしている。
だけど今はアイツが出張で家にいないからヒルデんとこで雇ってもらっている。
いきなりやって来たオレに嫌な顔一つしないで、寧ろ嬉しそうに歓迎してくれた。
暫く世話になりたいって言ったら、ジャンク屋の仕事が軌道に乗ってるらしく、人手が足りないからと喜んで迎えてくれた。
オレとしてはただ地球に一人でいるのが嫌だったから何も聞かずに置いてくれたヒルデには本当に感謝してる。










ベンチに1人座り誰もいない公園を見渡す。
この時間は決まって自分一人だけで、沈んでいく夕日を独り占めしているような感覚に陥る。
ここに座って考えることは一つで、ヒイロのことだ。
もう2週間もアイツに会っていない。
声を聞いたのは3日前。少しでも話がしたくて携帯にかけた。
あまり話せなかったけど、今ヒルデのとこにいる事と元気な事は伝えておいた。
アイツはオレがヒルデの仕事を手伝ってることを告げてもただ一言「そうか。」と言っていた。
なんで家にいないのか……聞かれても困るんだけど、聞かれなかったのもなんだか寂しい。
オレってわがままだな。





は〜と溜め息を吐きながら上を向いて伸びをした。
夕日はもう少しで完全に沈む。それと同時にオレの心も沈んでしまいそうだぜ。
アイツは今頃お嬢さんの護衛でもしてるんだろな〜。ヒイロの側にいるお嬢さんが正直羨ましい。
オレは今仕事をしていない。アイツが家にいて欲しいって言ったからだ。
……別にお嬢さんに嫉妬してるわけじゃない。だってヒイロは他の誰でもなくオレを選んでくれたから。
だからアイツの気持ちを信じてるし、お嬢さんのSPをしてることも嫌じゃない。



ただ……自分は今とてもヒイロに会いたいのだ。



今までもヒイロはよく出張に出る事はあった。でも1ヶ月間も離れてたことはなかった。
戦争中は離れていた時の方が多くて、会えなくても何とも思わなかったのに……。
会えない時間が余計にヒイロに会いたい気持ちを募らせる。
ヒイロの温もりが残ってる家に一人で居たくなくて出てきたのに………。
でもあと1週間でヒイロに会える。1週間の辛抱だ。
幸い仕事が忙しくて手伝ってる間は思い出してる暇はない。
でも仕事が終わるとまたここでアイツのことを考えてしまう。
もうそんな日が毎日続いている。ヒルデは何も言わないけどきっと分かってると思う。





夕日は完全に沈んでしまった。
オレがここに座ってるのは夕日が沈むまでの間。
そろそろ帰らないと夕飯を食べ損ねてしまう。
オレがこっちに来てる間、ずっとヒルデが夕飯を作ってくれている。と言っても社員全員の分なんだけど。
一度遅くに帰ったら、ご飯はないわ怒られるわで結構怖かった。
その時のことを思い出して少し心が軽くなった。
それと同時に立ち上がって出口の方を向いたら、そこにはいるはずのない人物が立っていた。



「デュオ!」
「ヒ…イロ?」



なんでヒイロがここにいるんだ?それより仕事はどうした?
そんなことをぐるぐると考えていたらヒイロが近づいて来た。
近くで見てもヒイロだ。間違いなくヒイロだ。ずっと会いたかったヒイロだ。



「ヒイロ…なんでここにいるんだ?仕事は?抜けてきたのか?」
「落ち着けデュオ。仕事は終わらせた。リリーナに頼んで早めに切り上げてもらった。」
「……なんで?」
「電話を…くれただろ?」
「ああ。」
「その時のお前の様子が元気そうじゃなかった……。」
「それだけで来てくれたのか?」
「ああ……それに俺もお前に早く会いたかった。」



オレはその言葉がすごく嬉しくてヒイロに抱きついた。ヒイロも優しく抱き締め返してくれた。
理由なんかどうでもよかった。ただヒイロが会いに来てくれたという事実だけで十分だった。
さっきまで沈んでたオレの心は太陽が昇ったかのように輝いている。
自分でも現金な奴だなって思うけどこればっかりは仕方がないと思う。
オレは満面の笑みを浮かべてヒイロの首にしがみついた。
暫くそうして抱き合って、ようやく落ち着いて離れた。



「そうだ、何でここにいるってわかったんだ?」
「さっきヒルデに会って来た。アイツが多分ここにいるだろうと教えてくれた。」
「そっか。」
「早く帰って来ないと晩御飯がないと言っていた。」
「ヒイロ……今日何処に泊まるんだ?」
「お前のとこだが……。」
「一緒に居てくれるのか?」
「当たり前だ。それに…ヒルデが人手が増えたと喜んでいた。残りの1週間しっかり頼むともな。」
「ヒルデの奴…しっかりしてるよな!」
「ああ。」
「じゃあ取り敢えず帰ろうぜ!アイツ怒らせたら結構怖いんだぜ!」




オレはヒイロの手を握って歩きだす。ヒイロも離さずに好きにさせてくれている。
来る時は重く感じた足取りもヒイロと一緒なら軽いもんだ。
今日のご飯はきっといつもより美味しく感じられるはずだ。だってヒイロが一緒だからな。
ヒルデの所に戻る間、これからの1週間のことを考えてますます嬉しくなった。











あとがき
取り合えず何やらよく解らないSSが出来上がりました。
かなり焦って書いていたので中途半端だ。でもア〜ップ!
ヒイロと会えない時間を仕事で紛らわすけど、結局ヒイロのことを考えてしまうデュオ。
要はデュオはヒイロに会いたかった!!ってことです(笑)
ヒイロはデュオがヒルデと一緒にいる事を知って飛んで来たって感じですね!
実はヒルデにヤキモチ焼いてたりするヒイロさん(汗)←大人になれよ!と突っ込みを入れてあげましょう。
ヒイロもデュオに会いたかったんだよvv

2006.03.31   葵